もう2週間ほど前になるが、評判を聞いて劇場に足を運び、鑑賞してきた。実は『ノー・カントリー』も観たかったのだが、久々の映画館とあって、なんとなく派手なものが観たいような気がして、この映画にした。
『クローバー・フィールド』はいわゆる「怪獣モノ」のパニック映画だ。ゴジラへのオマージュとされるこの映画のおおざっぱな設定はこんな感じ。
巨大都市ニューヨークを舞台に、“未知の何者か”が大規模な破壊を繰り広げるSFパニック・アクション超大作。『M:i:III』のJ・J・エイブラムスによる徹底した秘密主義の下、“映画史上初めてタイトルも隠した映画”として全世界で話題が集中。監督はテレビドラマ「フェリシティの青春」シリーズなどを手掛けたマット・リーヴス。自由の女神の頭部が破壊され、突然眼前に落下してくるパニック映像や、巨大都市を崩壊と破滅に追い込む“HAKAISHA”など未曾有の展開に期待。(シネマトゥデイより)
全編がハンディカムによる映像で、「未知の生物の襲来から逃げ惑う主人公たちによる記録映像」のスタイルをとっている。劇場内には「撮影方法により、鑑賞時にはジェットコースターに乗ったときのような乗り物酔いを感じる可能性があります」という注意喚起のポスターが貼られ、よほど観にくいのかと思っていたら、さほどでもなく、映像そのものへの不快感はなかった。
鑑賞後の感想も、娯楽映画として十分満足できるものだった。傑作とまでは言いがたいが、いわゆる「ハラハラドキドキ」を堪能できるつくりにはなっているのではないだろうか。低予算を逆手にとり「全体像を見せないことで恐怖感をあおる」という狙いは、ほぼ目的どおり達せられているように思う。また、謎を謎のまま明かさずに終了している部分も多く、帰宅して調べたら、映画に登場したさまざまな伏線を元に、物語の全体像を推測するホームページがたくさんあり、「なるほど!」とヒザを打つ一方で、既に制作が決定しているという続編が楽しみになった。
そしてこの映画にはもうひとつ、恋愛映画としての側面がある。物語は、ニューヨークに住む主人公ロブが、日本に転勤するための送別パーティのシーンから始まっている。ロブのガールフレンドもこのパーティに出席しているが、彼は周囲の心配をよそに「僕は日本に行くんだし」「そもそもなりゆきで寝てしまったんだ」とあっさり彼女をふってしまう。しかしその後、大音声とともにパニックがスタートすると、あれほど彼女に未練がなさそうだったロブが、負傷して自宅に閉じ込められた彼女からの電話を受け、死にに行くようなものとわかっていながら助けに走りだすのだ。
「さっきまで冷たかったのに、ずいぶん唐突な変わりようだな」と最初は思った。しかし途中から、それが作者にとっては意図的な変節ではないかという気がしてきた。ふたりの関係のみならず、破壊されたニューヨークの街とその住民との関係もそうだ。人々が平凡な日常の営みのなかで、そのあたりまえの幸福の大きさに思いを馳せることはなかなかない。しかし、日常が無慈悲かつ決定的に破壊され、失われたとき、初めてそれらが自分にとっていかにかけがえのないものであったかに気づくのではないか。その蹂躙が不条理であればあるほどに。
もしいま東京で同じことが起こったら、私はなにを考え、どこへ走るのだろう?そんなことを思った作品だった。
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