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帚木蓬生『アフリカの瞳』 ★★★☆☆

帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんは、私の大好きな作家のひとりだ。『三たびの海峡』という小説に感銘を受けて以来、これまでに発刊されている小説はほぼすべて読んでいる。帚木氏自身は、東大を出てテレビ局に勤めたあと大学に入りなおして医師になり、現在も福岡県で開業医として医療の現場に立つという異色の経歴をもつ作家なわけだが、私が初めて帚木氏の作品を読んだときには、そうした予備知識はなかった。医療のみならず幅広いテーマを取り上げ、そのひとつひとつに肉薄し同一化する器用さと圧倒的な筆力を持ちながら、それらがまったく上滑りせず、底には常に深い人間考察と優しさが流れていて、読むたび魅了されてきた。作品によってのめりこみ具合は異なるものの、総じて「ハズレのない作家」というのがこれまでの印象だ。

ちなみにこの小説は、同氏の旧作『アフリカの蹄』のシリーズ別編だそうだ。本棚を見てみたらその作品もあったので、読んだはずなのだが、タイトルを見てもストーリーがまったく思い出せなかった。しかし悪印象があればそれはそれで覚えているはずなので、私的には「可もなく不可もなくおもしろい」というところだったのではないか。双方のあらすじをAmazonより引用しておく。

『アフリカの蹄』
絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師。留学先の南アフリカで直面した驚くべき黒人差別に怒り、貧しき人々を救うため正義の闘いに命をかける。証拠品の国外持ち出しは成功するか!?山本周五郎賞受賞作家が描く傑作長編冒険サスペンス。

『アフリカの瞳』
国民の10人に1人がHIVに感染。毎日200人の赤ん坊が、HIVに感染したまま生まれてくる国。ここではエイズという絶望すら、白人資本に狙われる…。いまわれわれに生命の重さを問う衝撃作。

どちらも決して退屈ではないのだが、主人公ほかのキャラクターが、もう少し特徴的だったらエンターテイメント性が増したように思う。エンタメに走ること自体の是非もあるだろうが・・・。医療職ならではのピンポイントな視点はもちろん、これと決めた対象に深く迫りリアルに追求する力量はとてつもなく貴重だと思うので、次作に期待したい。個人的に、帚木さんの作品には、なんともいえない思い入れがあるので、これからもずっと応援し続けるつもりだ。

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